@phdthesis{oai:hirosaki.repo.nii.ac.jp:00004638, author = {吉崎, 聡子}, month = {Mar}, note = {本論文は,心理学における動機づけ概念について自己決定理論に基づき,児童期から青年期を対象として実証的な検討を行った心理学的研究である。論文は7章,4つの研究から構成されている。 第1章では,導入として,心理学における動機づけ理論を概観した。動機づけ研究の初期には,フロイト派の精神分析理論とハル派の動因理論研究に基づいて研究が行われた。さらに現代では,人間の動機づけを「認知」・「感情」・「欲求」のそれぞれを重視する理論群へと分類する試みがなされている。 第2章では,本論文の理論的背景であり,現在最も有力な動機づけ理論の一つである,自己決定理論について取り上げた。中でも,最も注目されている下位理論である,有機的統合理論と基本的欲求理論について論じた。有機的統合理論は,人間の外発的動機づけと内発的動機づけに関する理論でり,これまで二元論で扱われていた外発的動機づけと内発的動機づけが一次元上に存在し,その違いは人間の自己決定性に依拠すると述べる。また,基本的欲求理論は,人間が生得的に持つ基本的心理的欲求として,自律性欲求,コンピテンス欲求,関係性欲求の3つの欲求を想定している。この3つの欲求が充足されると,人間は自律的に動機づけられ,well-beingが促進されるとされている。これまでの研究では,これら下位理論を別々に検討することが多く,2理論を統合的に検討する研究は少なかった。この点を踏まえて,次章以降において調査研究を進めた。 第3章では,大学生を対象として,自己決定理論の下位理論の有機的統合理論と基本的欲求理論を統合的に検討した。具体的には,有機的統合理論における,外発的動機づけの4段階 (調整段階)それぞれに対する,心理的欲求充足の影響を検討し,自己決定理論の検証を行った。 第3章1節では,自己決定理論に基づき,心理的欲求充足が動機づけの自律性を促進するという仮説について,大学1年生,2年生,及び3年生を対象とし,多母集団同時分析を行った。その結果,3つの学年集団に対して,同じモデルの適用は可能であるが,各変数の影響力は集団間で異なることが示された。特に3年生集団では,心理的欲求充足から自律性の高い動機づけに対し正の有意なパスが多く見られた。 第3章2節では,大学1年生と 3年生を対象に,1節と同様,多母集団同時分析によって集団の比較を行った。結果,1年生と3年生に対し,同じモデルの適用は可能であるが,各変数の影響力が集団間で異なることが示された。特に3年生集団では,心理的欲求充足から自律性の低い外発的動機づけに対し負の有意なパスが見られた。これは1節では見られない結果であった。 第4章では,大学生を対象に,縦断的研究法を用い,教職志望の別と教育実習前後の欲求充足が動機づけの自律性に与える影響を検討した。その結果,欲求充足に対する教育実習の明確な効果は見出されなかった。また教職志望の者では関係性欲求の充足が動機づけに影響を及ぼしていた。一方,非教職志望の者は,コンピテンス欲求の充足が動機づけに影響を及ぼしていた。 第5章では,小学生・中学生を対象とし,基本的欲求理論における,人間の基本的心理的欲求とされる自律性欲求,コンピテンス欲求,及び関係性欲求の3つが充足すると,well-beingが促進されることを検証した。学校や学級への適応をwell-beingの一部とみなし,心理的欲求充足と学校適応の関連を質問紙調査によって検討した。分析には,個人と学級の関係を考慮するため,マルチレベル分析を用いた。その結果,個人レベルでは,心理的欲求が充足されている者は学級適応感も高く,また,学級レベルでの適応指標が高い場合,成員の学級適応感も高かった。よって,基本的欲求理論は支持された。さらに,児童生徒の学校適応感は,彼らが所属する学級からの影響も考慮すべきであるという示唆を得た。 第6章では,3つの心理的欲求のバランスの問題について,SheldonとNiemiec(2006)の研究を基に検討した。本邦では,バランスのとれた欲求充足の重要さの検証はまだなされていない。故にSheldonとNiemiec(2006)にならい,大学3年生を対象として,バランスのとれた心理的欲求充足と動機づけの調整段階の関連を検討した。その結果,バランスのとれた欲求充足よりも,3つの心理的欲求充足が個々に動機づけの調整段階へ影響を持つことが示され,SheldonとNiemiec(2006)とは異なる結果となった。 第7章総合的考察では,第6章までの研究を踏まえ,自己決定理論の有機的統合理論と基本的欲求理論について,動機づけと欲求充足の観点から総合的に考察を行った。特に,3つの心理的欲求充足は動機づけに影響を及ぼすが,その影響は一様ではなく,環境や文脈により異なることが,複数の調査により多角的に示された。最後に実践場面へ還元することの意義や方略について論じた。}, school = {弘前大学}, title = {自律的動機づけに関する有機的統合理論と基本的心理的欲求理論の統合的検証}, year = {2016} }